2016年4月19,26日は、院生のK君が以下の文献を紹介してくれました。

Sasson et al.(2016). Resource quality affects weapon and testis size and the ability of these traits to respond to selection in the leaf‐footed cactus bug, Narnia femorata. Ecology and Evolution.

ざっくり言うと、ヘリカメムシ亜科のN. femorataを対象に、配偶競争に有利な武器形質(腿)と、精子競争に有利な精巣サイズの、環境と遺伝の相互作用を調査した研究です。

具体的には、半きょうだいを用いた量的遺伝学的調査なのですが、あえて餌の質を変えた処理を作ることで、適応的な形質の進化可能性が、環境にどのように影響されるのか明らかにしようとしています。

結果的に、高栄養下(熟れた実)では体サイズの遺伝率が高くなり、武器形質と精巣サイズも大きくなっていました。

一方、中程度の栄養下(熟れてない実)では、武器を最も大きくなりやすいが、精巣が小さくなるものの、この栄養条件では両形質の遺伝率がほぼ0になることが分かりました

これらの結果から、武器形質と精巣サイズに対する遺伝的変異は、偶発的に高栄養下に遭遇した際に顕在化するものの、より普遍的に栄養条件が悪い局面では、精子競争より配偶競争が優先される戦略が固定されている可能性が示唆されました。