2016年8月3~5日に実施する『動物生態学実験』で行うテーマは以下の3つです。

1. アリの耐熱性の種間比較
 夏期に生息環境が、高温・乾燥状態になる地域では、耐熱性はニッチに大きく影響しうる。近年、アリを対象にした調査から、熱耐性には大きな個体変異があり、生息環境や種間競争との関連が報告されている。  地中棲より地上棲、競争に強い種より弱い種で、耐熱性が高い傾向がある。本実習では、山形大学周辺で採取できるアリの耐熱性を複数の種で比較すること。

2. クモの円網の構造と行動
 クモには、採餌のために粘着性の糸を同心円状に張る種が多い(円網)。円網の大きさや形は種によって異なるが、共通する特徴がある。この課題では、円網の中心の位置と、円網上でクモが待機する姿勢に注目して、2種以上のクモを比較する。
※ヒント:網の中心は上か下に偏り、クモの姿勢も上向きか下向きに偏っている。

 参考文献
 a. 垂直円網と非対称性 (PDF)

 b. Spider orientation and hub position in orb webs


3. 標識再捕獲法によある個体数推定
 植物やイソギンチャクのように、動き回らない固着生物は比較的数えやすい。ある地域にいる個体全てを数えるのは難しくても、一定面積(体積)にいる個体数(個体群密度)が分かれば、生息域の全体の面積(体積)をかけることで個体数を推定できる。
 一方、活発に動き回る動物は、注意しないと同じ個体を重複して数えてしまう。そこで捕獲して数えるか、数えたものに印(標識, mark)をつけるなどの工夫が必要となる。だが、動き回る性質を利用して、動物が活動する範囲の個体数を推定することもできる。それは、標識再捕獲法(Mark and Recapture)と呼ばれ、野生動物の調査で現在も使われている方法。
 本実習では、チョウ目の昆虫(e.g. モンシロチョウ)を対象に、再捕獲を最低2回行うこと。